【058/100】
ムーンライト・ラブコール」「ヴェールマンの末裔たち」がハートウォーミング
でよい。
奔馬性熱暴走」は作者が遊びすぎでなんだかなぁ、って感じ。


殉死 (文春文庫)

殉死 (文春文庫)

【059/100】
乃木希典とその妻・静子の明治帝に対する殉死を描いた、「坂の上の雲」の後日譚的な
位置づけをなす中篇。
軍人としては無能でありながら、誰よりも軍人たらんとした男の劇的で、そして苦悩に
満ちた生涯に感銘を受ける。
殉死はばかげた行為であると思うし、乃木は私には決して尊敬の対象となるような人物
ではないが、その凛とした生き方にはある種の感動がある。
日本人が誰しも心に秘めた武士道精神に訴えかけてくるものがある。
戦前、神のごとくにあがめられたのも、人々が乃木に武士道精神を見たからなのだろう。
本書は司馬の文庫本には珍しく、あとがきも解説もない。
凄惨な結末だけに、作者としては余韻を大事にしてもらいたくてあえてあとがきも解説
もつけなかったと予想しているのだが、どうだろう。