スプートニクの恋人

スプートニクの恋人

【041/100】
村上春樹の長編。
いつものようにわけがわからないということはなく、今回はすみれの失踪という謎が
主題にすえられていて、ミステリ的な興味で読ませるし、村上春樹の小説にしては
珍しくハッピー・エンドなので読後感もさわやかだ。
でもまぁ、私はそんなストーリーよりも、舞台となるギリシアの小島の風景描写が
美しいのに感心した。ギリシア、行ってみたいなぁ。
それからミュウのこのセリフ、とても印象深い。

私たちは素敵な旅の道連れであったけれど、結局はそれぞれの
軌道を描く孤独な金属の塊に過ぎなかったんだって。遠くから
見ると、それは流星のように美しく見える。
でも実際のわたしたちは、ひとりずつそこに閉じこめられたま
ま、どこに行くこともできない囚人のようなものに過ぎない。
ふたつの衛星の軌道がたまたまかさなりあうとき、わたしたち
はこうして顔を合わせる。あるいは心を触れ合わせることがで
きるかもしれない。でもそれは束の間のこと。次の瞬間にはわ
たしたちはまた絶対の孤独の中にいる。いつか燃え尽きてゼロ
になってしまうまでね。