月光の囁き (1) (小学館文庫)

月光の囁き (1) (小学館文庫)

【033/100】
ギャグ漫画の雄、喜国雅彦のシリアス長編。
本人のあとがきによれば、シリアスを書きたかったわけではなく、編集部の意向によって
無理やり書かされたものらしいが、とてもそうとは思えない力の入った演出ぶりで、ほん
とうは本人もこういうシリアスなものが書きたかったのではないかと思う。
中学生、田舎、夏、剣道部、と青春ものの態はなしてはいるが、そこで描かれるのが
いわゆるフェッティシュな性愛である点が「普通」の青春ものと大きく異なっている点で
ある。
そしてそんなドロドロしたものを描きながらもどこかカラっとしたさわやかさのある
ストーリーは実に面白い。
人間の業の深さを感じさせてくれる名作である。
一読をお勧めする。