P.I.P.―プリズナー・イン・プノンペン (小学館文庫)

P.I.P.―プリズナー・イン・プノンペン (小学館文庫)

【035/100】
コミックバンチで連載してた漫画版がけっこう面白かったので購入。
この小説版はストーリーはそこそこ面白いが、文章と構成がつたなく、その点が残念。
ただ、漫画版で描かれなかった、カンボジアの政治情勢や日本人長期滞在者の生活描写が
興味深かった。
インドネシアの銀行は年利二十パーセントもあり、そこに二百万円ほど預けて利子の
四十万円で生活しているワダさんの話とか。
月に三万円もあれば生活するのに十分で、
「バリ島にいる間、朝から晩までサーフィンをし、夜は好きな読書をしながらビールを
飲んで過ごす」という、理想的な日々を送れてしまうのだ。
「ストレスに耐えながら懸命に働き、何十年もの住宅ローンを払い続け死んでいく人生
をなぜ多くの人は選ぶのだろう」と主人公のイザワは述懐するが、まさしくその通りだ。
なんともうらやましい。そういう生き方もありだよなぁ。
さて、この小説は主人公イザワの監獄からの脱出がメインプロットなのだが、それとは
別にポル・ポトの虐殺の真相にも迫っており、むしろそちらのほうが作者が書きたかった
ことなのではないかと思える。
作中で語られるポル・ポトの虐殺の真相は、毛沢東に関連するという実に意外なもので
あるが、ここだけ小説の主筋と関係なく唐突に語られることから、実際に作者がプノン
ペンの監獄で聞いた話(作者はプノンペンで監獄に入れられた経験を持つそうだ)なの
かもしれない。しょせん小説なので額面どおり信じるわけにはいかないが、けっこう
信憑性のある話なのかもしれない。
しかし、アジアってすごいところだなー。