新耳袋―現代百物語〈第2夜〉 (角川文庫)

新耳袋―現代百物語〈第2夜〉 (角川文庫)

【034/100】
私は超常現象には極めて懐疑的なのだが、こういう不思議な話を読むのは大好きだ。
この新耳袋は実話怪談集であり、そのためかあとがきにあるように「じつに突発的に
起こり、理由もわからず、結末らしいものがなく、意味すら不明」の話ばかりなのだが、
それがかえって興味をそそる。
例えば「エレベーター」。
1階でエレベーターを待っていると、表示ランプはまだ4階を示しているのに、
エレベーターが止まる。
中には買い物籠を持った主婦やサラリーマン、こどもなど種々雑多な人が乗っている。
今は午前二時。はてな、と思っていると
「下に行きます。乗るのですか、乗らないのですか?」と中の一人に尋ねられる。
「いえ・・・満員みたいだから、いいです・・・」と答えるとエレベーターは下降して
行った。このマンションには地下はないのに。
なんだかわけがわからなくてよろしい。
しかし、中には首をかしげるような話も収録されている。
例えば「開かずのトイレ」は単なる新入生いじめのいたずらのようにも思えるし、
「白い喫茶店」は店が移転しただけなんじゃないかと思う。
まぁ、このように玉石混淆の本ではあるが、暑い真夏の夜に窓を開け放って風鈴の音を
聞きながら読むのには最適である。
夏はやっぱり、怪談なのである。