新装版 最後の将軍 徳川慶喜 (文春文庫)

新装版 最後の将軍 徳川慶喜 (文春文庫)

【032/100】


最後の将軍、徳川慶喜の生涯を描いた作品。
NHK大河ドラマの原作でもあり、そのドラマ放映時、大学の民俗学の教授が
「とくがわけいき」と言っていたのが記憶に残っている。
この作品では徳川慶喜がいかに多芸多才の人であり、傑物であったが語られている。
しかし、司馬はほかの作品(例えば「王城の護衛者」とか)では慶喜をボコボコに
描いていたような記憶があるなぁ。
司馬は作品を面白くするためにけっこううそをついたりしているので、演出として
そういうこともままあるのだろう。
維新後の慶喜は趣味に生き、生涯を通して退屈するということがなかったそうである。
激動の前半生、趣味に没頭した後半生。なかなかうらやましい人生ではある。


地を這う虫 (文春文庫)

地を這う虫 (文春文庫)

【033/100】

高村薫の短編集。
ハードカバーで出たのが1993年。文庫が1999年。
だいたいハードカバーは3年で文庫落ちするのだが、高村薫の作品はやたらと文庫化
まで時間がかかる。
マークスの山」は10年くらいかかってるし、「照柿」(94)、
レディ・ジョーカー」(97)はいまだに文庫化されていない。
これは高村の小説が出れば必ずベストセラーになり、ハードカバーのままでもじゅうぶん
売れるからというセールス側の事情もあるのだろうが、本人が文庫化に当たって作品に
かなり手を加えるからという理由もあるらしい。
で、この短編集であるが、さすがに面白い。
四つの短編が収められていて、どれも警察を退職した男が主人公となっている。
とくに印象深いのが「愁訴の花」。人間を書かせるとうまいのである、この人。