生きるのが困難な人々へ 孤独について (文春新書)

生きるのが困難な人々へ 孤独について (文春新書)

【020/100】
私が中島義道にはまるきっかけになった一冊。
再読だが、あえて100冊に加えよう。
誰にとっても、人生観をゆすぶられる本だと思う。

ごまかすのはやめなさい!あなたはまもなく死んでしまうのだ。あなたをまもなく襲う
「死」をおいてほかにもっと大切な問題があるのだろうか?あなたは「死」とともにま
ったく無になってしまうかもしれないのだ。そして、何億年たっても二度と生き返らな
いかもしれないのだ。もうすぐ死んでしまうあなたが、必死に日常的な問題にかかずら
っていること、それはたぶん最も虚しい生き方である。「死」を目前に控えて震えてい
る死刑囚より虚しい生き方である。キルケゴールとともに言えば、日常に絶望していな
いことこそ絶望的なのだ。
(略)
もし、あなたが「死」を最も大切な問題と考えているなら、孤独になるしか方法はない。
(略)
具体的には、「孤独になる」とは、他人に自分の時間を分け与えることを抑えることで
ある。自分の生活を整理し、なるべく他人のためではなく自分のために時間を使うこと
である。多くの読者は「そんなことはできない」と言うであろう。しかし、私が強調し
たいことは、頭で考えるのではなく少しずつ実際に石を動かしてみることだ。生活を変
えるように努力してみることだ。すると、たぶん思わぬ手応えを感ずるであろう。あな
たは次第に孤独であることに喜びを見いだすであろう。他人に囲まれていなくとも、寂
しくなくなるであろう。そして、自分固有の人生の「かたち」が見えてくるであろう。
 そんな曖昧模糊としたことは信じられないという人に答えたい。それなら、あなたは
死ぬまであなたのぬるま湯の日常生活を続けるがいい。そして、小さな薄汚い世間体を
抱えたまま「これでよかった」と呟いて死ねばいい。


心打たれる文章である。
人はいつか死ぬ。しかし、みんな怖いからそのことから目を背けている。
それは実に虚しい生き方なのだ。
すべての人に読んでもらいたい本である。


ちなみに私が不労所得について調べているのも、この人の言う、人生から「半分」降りる
という生き方を実践したいからである。
世間から目をそむけ、ひたすら思索にふける静かな生活。
それこそ私の望んでいるものではなかろうか?


纐纈城綺譚

纐纈城綺譚

【021/100】
田中芳樹の、おそらく金庸あたりを意識した武侠小説
イラストは「うしおととら」の藤田和日郎
さくさく読めて楽しめる。
相変わらず人物造型は薄っぺらいけど。
あと、中国では人肉を食うのがタブーだったって書いてあるけど、ほんとうか?
水滸伝なんかには人肉を食う描写があるし、史記にも漢の高祖が彭越をしおから
にして廷臣に配ったっていう記述があるぞ。
三国志演義にも劉備に実の母親を殺して股の肉をふるまった隠士の話が美談として
とりあげられてたように記憶している。
吉川英治は「日本人には理解しがたい」とコメントをつけていた)
もちろん、タブーはタブーなのだろうが、それほど異常なこととは思われてなかった
んじゃないかなぁ。
浅学ゆえ、確かなことは言えないのだが。


かれはロボット (ハヤカワ文庫JA)

かれはロボット (ハヤカワ文庫JA)

【022/100】
SF短編集。
面白い。
この草上仁という人は住友生命の情報システム部で働いているらしい。
どうりで会社員の生活がリアルに描かれているわけだ。
やっぱSFは最高。
この人の短編集、見つけたらまた買おうっと。