中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

本書は盗賊と言ってもチンケな山賊や海賊ではなく、天下を狙った盗賊たちを取り上げ
ている。漢の高祖、明の太祖、李自成、洪秀全、そして毛沢東。彼らは盗賊から皇帝
にまで成り上がった「盗賊皇帝」である。
この中で毛沢東が入っていることに違和感を覚える人もいるかもしれないが、彼こそ
極めつけの盗賊皇帝なのである。彼はマルクスよりもむしろ水滸伝を指針として革命を
すすめ、そして帝国を作り上げた。共産党に権力が集中している現在の中国は皇帝が
君臨していたころと変わらぬ「帝国」に他ならないのだ。


本書の中で私がいちばん印象深いのは太平天国のエピソードだ。
試験に落ち続けて頭のおかしくなった落第書生、洪秀全が夢で見た光景を元に作り上
げた太平天国軍は、一時南京を占領するほどの勢いを示すが、そのうち内ゲバをはじめて
内部崩壊を起こし、滅亡する。
洪秀全は最後には「食べるものがなくなりました」と報告する部下に、「ならば甜露
(聖書に出てくる食べ物で雑草のことだそうだ)を食え」と言い、「そんなもの食べ
られません」と部下が答えると、「それなら俺が食ってみせる」と雑草ばかり食って
体が衰弱して死んでしまったそうだ。
なんともむちゃくちゃで、面白い。


ほかにもエピソード満載で、とても興味深い。
文章もわかりやすく、読みやすい。
おすすめ。