ルーズベルトは一九四五(昭和二十)年四月十二日、脳溢血で急死する。
その一週間足らず前に就任した鈴木貫太郎首相は、同盟通信を通じてルーズ
ベルトの業績を評価し、その死に深い哀悼の意を表する談話を発表した。四
月といえば、日本本土への無差別爆撃の真っ最中である。にもかかわらず、
敵国の最高指導者の死に哀悼の意を表した鈴木首相の雅量は、まさに最低の
非人道戦争中に吹いた一陣の人道の風を思わせる。
 米国に亡命中のトーマス・マンはこの談話を伝え聞いて、「あの東方の国
には、騎士道精神と人間の品位に対する感覚が、死と偉大性に対する畏敬が、
まだ存在するのです」と賞賛したのである。(評論家 大澤正道


産経新聞に連載中の「新・地球日本史」の一節である。この「新・地球日本史」
非常に面白いので、毎日楽しみにしている。機会があれば読んでみて欲しい。
産経だから、かなり「右」寄りなのだけれど。